こんにちは。
元野村證券女性営業マンのフリーファイナンシャルアドバイザーNatsumiです。
今日は、「証券会社」の話です。
2019年10月にアメリカのチャールズシュワブ社が株式売買手数料の無料化を発表してから、日本でも12月以降ネット証券会社を中心に株式売買手数料の無料化を発表する動きが見られます。
とはいえ、証券会社にとって株式売買手数料は収益源の柱の1つです。
「株式売買手数料は収入源の大事な柱であるのに、それを撤廃してしまうという決断をしても大丈夫なのか?」と思った人もいるでしょう。
今日は金融先進国であるアメリカの証券会社の収益構造と収益源の変化の歴史を分析、その後日本の証券会社の収益構造の分析をすることで、
アメリカと日本の証券会社の収益構造の分析と、今後の収益源
を分析していきたいと思います。
- 手数料無料の流れに疑問を持った人
- 証券会社の収益構造について知りたい人
な人はぜひ読んでくださいね。
Contents
アメリカの証券会社の収益源は「金融収益」
現在のアメリカの証券会社の主な収益源は「金融収益(Net interest revenue)」です。


(各社2018年アニュアルレポートを元に、筆者作成)
各社比率に違いはあるものの、ほとんどの企業が金融収益で主な利益を稼いでいます。
金融収益とは純金利収益ともいい、お金を貸すあるいは運用することで得る利益を指します。
具体的には、証券会社が保有する預金や有価証券の受取利息・配当金など財務活動から得られた収益のことをいいます。
信用取引の金利・貸株料などもここに含まれます。
会社によってはまだまだ売買手数料の比率が多いところはあれど、アメリカの証券会社のビジネスモデルは既に売買による収益モデルではなく金融収益によるビジネスモデルによって成り立っているのです。
だからこそ、今回のチャールズシュワブ社などの売買手数料を無料にする決断ができたのです。
また、アメリカでは、コミッション・ベースのブローカレッジからフィー・ベースのアドバイザリー ・投資顧問業務へのシフトも加速しています。
アメリカの証券会社の収入項目は主に以下のように分けられています。
- Trading revenue・・・売買による手数料
- Asset Management and administration fees・・・資産管理による手数料
- Net interest revenue・・・金融収益/純金利収入
- Other・・・その他
アメリカでは、1976年収益における「46%」が売買手数料に依存する収入構造でしたが、
1975年の手数料自由化を契機に、また、90年半ば以降のネット証券の台頭を経て、2005年にはわずか11%までに下がりました。
証券会社のリテール部門においては委託手数料に代わる収入源を確保する手段として
資産管理型営業への転換が目指され、その結果、投資信託販売やSMAなどの資産運用サービスから発生する手数料の比率が高まり、2005年は両者合わせて11%と、ほぼ委託手数料に匹敵する水準となりました。
一方、M&Aアドバイザリー、トレーディングに伴う金利収入、プライム・ブローカレッジ等、新しいサービスの収入は、「その他証券関連業務」に含まれますがその割合は全収入の約半分を占めるほどに拡大しました。
そのため、コミッション・ベースのブローカレッジからフィー・ベースのアドバイザリー ・投資顧問業務へのシフトをいち早く取り組んできたチャールズシュワブの収益構造は2018年末時点で以下の通りになっています。
(チャールズシュワブ2018年アニュアルレポートを元に、筆者作成)
株式売買などによる手数料収益はすでに「6.5%」と、収益を構成する割合としては一番低くなりその代わりにアドバイザリーからのフィーが「30.9%」となっています。
このような変化から、収益のシェアとしては、
金融収益>アドバイザリーフィー>売買による手数料
となっている企業が多くなっています。
日本の証券会社の収益源も「金融収益」
さて、現在の日本の証券会社の主な収益源も、実は「金融収益」です。

(各社2019年3月期決算短信を元に、筆者作成/楽天証券においては2018年12月期と2019年12月第1四半期を合算して計算)
2019年3月期の各社決算短信を元に収益構造を分析すると、対面証券においてもネット証券においても、収益において主な比率を占めているのが「金融収益」です。
売買による委託手数料の収益に占める割合は、対面証券で「10%前後」、ネット証券で「30%前後」となっています。
2019年12月に一部商品の売買手数料撤廃を主に発表しているのはネット証券が多いですが、実は対面証券は既に売買による手数料収入はあまり収益において比率を占めていないことがわかります。
日本の証券会社の今後のビジネスモデルを予測
対面証券は「フィー型手数料のビジネス」へ
このブログでは既に指摘している通り、日本の証券会社では
アドバイザリーフィー型のビジネスが定着していない
ことが課題となっています。
「毎月の売買で発生させる手数料収益ではなく、管理料などのフィーとして毎月必ず発生する手数料収益を主軸にしよう」
というビジネスモデルにすれば
- お客様に無理な頻度の取引を強いる必要がない
- 営業マンも業務量が減る
などのメリットが生まれます。
会社としても、毎月安定して入ってくる収益があることはこれからの営業計画やビジネスを拡大することを考える余地を与えてくれるので好ましいです。
お客様が「最適な資産運用の提案」を受けるために、証券会社のビジネスモデルは今こそ早急に替えられるべきだと思います。
ネット証券は統合が起こるかも
ネット証券においては、今後統合が進むのではないかと予想します。
アメリカでは2019年11月、ネット証券シェア1位であるチャールズ・シュワブが上場会社で最大のライバルといえるTDアメリトレードを260億ドルで買収する計画であると発表しています。
ウォールストリートジャーナルによれば、業界全体で仲介手数料が低下していることから業容拡大と経費削減が収益力へのカギとなっており、今回、両社は3年以内にTDアメリトレードの経費の52%に相当する18億~20億ドルを削減する予定、シュワブの1株当たり利益(EPS)は初年度で4.2%、2年目は10.7%、3年目は23.2%増加すると見込まれています。
また、手数料の安さを売りにする他の証券会社は今後について、アナリストはさらに統合が進むと考えていそう。
アメリカの証券業界の動きはいずれ日本にも起こるため、日本のネット証券会社であるSBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券などの証券会社の統合が今後あるかもしれませんね。
まとめ
ということで、今日は「アメリカの証券会社と日本の証券会社の収益構造」について話してきました。
今回、日本のネット証券会社もアメリカのネット証券会社に追随して株式売買手数料等を撤廃していくことを発表しましたが対面証券の方が既に売買手数料による収益の割合が少ないのは意外でした。
今後の証券業界の動きに注目していきたいと思います。
それでは、今日はこれで。