こんにちは。
年間100冊以上の本を読むフリーランスwebエンジニアのNatsumiです。
今日は「読書要約」です。
皆さんは、長年経営者やリーダーに読み続けられている「戦略書」をご存知ですか?
それが、「孫子」という本です。
「孫子」を書いたのは斉の国の出身で、呉という国に仕えた「孫武」だと言われています。
孫子の兵法とは「軍事思想家の孫武が説いたとされる兵法」で、IT経営者にはこの「孫子」からヒントを得た戦略で経営をしているという人が多いのです。
かの有名なマイクロソフト創業者・ビルゲイツやソフトバンク創業者・孫正義も、「孫子」の愛読者です。
しかし、兵法書「孫子」は全13篇あり、読むのが大変なのです。
そこで、「最高の戦略教科書 孫子」という本を紹介します。
「最高の戦略教科書 孫子」引用と現代語訳、その考え方と筆者による解説、が載っているため、「孫子」の内容をわかりやすく理解できると思います。
ということで今日は、
「最高の戦略教科書 孫子」の読書レビュー
を紹介します。
- IT経営者も参考にする戦略書「孫子」について知りたい人
- 経営者の戦略の思考が知りたい人
はぜひ読んでくださいね。
この本の構成
これまでは「具体的な」マニュアル本を読んで実践する方が成果への早道だったが、現代は未来に対する具体的なマニュアルを極めて持ちにくい状態になりつつある。
↓
過去の成功体験を安易に未来に当てはめるのは危険な行為であり、状況が刻一刻と変化している以上、一つ前の法則が次に当てはまる保証はない。
↓
こんな状況の中で、「方向性」や「競争状態での原理原則」の感覚を養うのにうってつけな教材が、「歴史書」と「孫子」という古典。
↓
この本では、
①孫子は何が言いたいのかー内容の理解
②孫子は現代でも活用可能なのかーその内容の一般化と抽象化とツッコミ
という二部に分けて、「孫子を身につける」ステップを踏んでいく。
という本の構成となっています。
全ての章と孫子の引用を解説しているとキリがないので、今日は、第一部より、私が今後覚えて使いたい孫子の引用と考え方についてまとめていきます。
第一章 百戦百勝は善の善なる者にあらず
第一章では、著者である孫武の生きていた時代背景と孫子の争いに対する考え方が述べられています。
「孫子」全篇の最初の一節と、結論部分に書いてある
「孫子曰く、兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず」
「亡国は以ってまた存すべからず、死者は以ってまた生くべからず」
(戦争は国家の重大事であって、国民の生死、国家の存亡がかかっている。それゆえ、最新の検討を加えなければならない。
国は亡んでしまえばそれでおしまいであり、人は新弟子前歯二度と生き返らないのだ。)
という記述を用い、
現代のビジネス戦略や自己啓発といったものの前提は、
「人や組織は間違えるし、失敗も犯す。しかしそこから学習し、成長してその結果として成果をあげることができる」
であるが、孫武は、
「やり直しのきかない一発勝負になりかねないのが戦争。だからこそ重大事」
「死人であっても蘇生できたり、潰れた国や企業であっても復興できるのであれば、それは重大事であっても致命傷ではない。」
という前提に立っており、
孫武の前には(時代には)、「負ければ国が滅びかねない状況」という光景が広がっていたことが読み取れます。
また、
「それ兵を鈍らし鋭を挫き、力を屈し貨をつくさば、即ち諸候、その弊に乗じて起こらん。智者ありといえども、その後を善くすること能わず。」
(長期戦になれば軍は疲弊し、士気は衰え、戦力は底をつき、財政危機に見舞われれば、その隙に乗じて、他の諸国が攻め込んでこよう。こうなっては、どんな知恵者がいても、自体を収拾することができない)
という供述からも、目の前の敵以外にもライバルが多数いる状況が理解できます。
そのなかで、「孫子」には善く知られた名言があることが述べられています。
それが、
「百戦百勝は善の善なるものに非ず。
戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」
(100回戦って100回買ったとしてもそれは最善の策とはいえない。戦わないで敵を屈服させることこそが最善の策なのだ)
という一文です。
百戦百勝といえば、いかにも素晴らしい戦果のように聞こえます。
しかし、100回も戦っているうちに、自分や組織の体力・経営資源をボロボロにし、101回目に第三者に漁夫の利をさらわれては愚の骨頂です。
「負けてはダメだが、それどころか勝っても自分がすり減ってもダメ」なのです。
孫子の時代の戦争の条件は、全ての敵がリングに一度に立ち、最後の勝ち残りを争う戦い方でした。
こんな場合、最初から戦いに逸ってしまえば、体力を消耗して、早々に脱落してしまうのは明らかです。
よって孫子は「まずは力での対決を避ける振る舞い方」を考えました。
その方法は、以下の3分類にされています。
- ライバルの方が力が弱い場合→相手を傷めず、無傷のまま引き入れる
→(例)台頭の合併や非敵対的なM&Aを使ってうまく敵対解消を解消する - 彼我が同じくらいの力の場合→相手のエネルギーが小さいうちに摘み取る/相手の戦うエネルギーをうまく交わす
- ライバルの方が強い場合→逃げるか戦わない散々をして生き残りを図る
→(例)一旦強いものの傘下に入ったり、協力者になって生き残る
以上の3つを見極めるためにも、「いかに彼我の力を正確に比べるか」は重要になってきます。
第二章 敵と味方の比べ方
自分とライバルの力を知る重要さを指摘した、きわめつけの名言が「孫子」にはあります。
「彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず」
(彼を知り、己を知るならば、絶対に敗れる気づかいはない)
日本でも企業経営者が座右の銘としてよくあげる言葉であり、お隣中国でも、好きな名言で一番多く回答があるのがこの名言です。
そして、「彼の何を知り、己の何を知ればいいのか」は「五事七計」という切り口を提示しています。
「五事七計」のうち「五事」とは、
「『道』とは民をして上と意を同じくせしむるなり」
→下々の人間を上に立つものと一心同体にさせる理念
「『天』とは陰陽、寒暑、時制なり」
→昼夜、晴雨、季節などの時間的条件
「『地』とは、遠近、険易、広狭、死生なり」
→行程の感覚、地勢の険しさ、地域の広さ、地形の有利不利などの地理的条件
「『将』とは、知、信、仁、勇、厳なり」
→知謀、信義、仁慈、勇気、威厳などの将軍の器量
「『法』とは、曲制、官道、主用なり」
→軍の編成、職責分担、軍需物資の管理など軍政に関する条件
のことをいいます。
もし、「五事」を現代風に企業に当てはめるとすれば、
- 組織全体、ないしはチーム内での「なぜ戦うのか」という理念の共有度
- プロジェクトを世に問うタイミング
- プロジェクトを実施するにあたってのインフラ
- チーム内での現場責任者を誰にするか、各自の能力はどうか
- チーム内のチームワークや規律、使用機材の性能など
に例えることができるでしょう。
こうした「五事」をもとにして、実際にライバルとの比較を7つの切り口から行おう、というのが、次の「七計」です。
「主、孰れか有道なる」
→責任者は、どちらが戦いの理由を下まで浸透させているか
「将、孰れか有能なる」
→将軍は、どちらが有能であるか
「天地、孰れか得たる」
→天の時と地の利はどちらに有利で有るか
「法令、孰れか行わる」
→法令はどちらが徹底し、兵器や兵站はどちらが優れているか
「平衆、孰れか強き」
→軍隊は、どちらが精強であるか
「士卒、孰れか錬いたる」
→兵卒は、どちらが訓練され、組織されているか
「賞罰、孰れか明らかなる」
→賞罰は、どちらが公正に行われているのか
これらの「七計」を使って、最終的に「勝てそう/無理そう」を判断していくのです。
第十章 勝てる組織と将軍の条件
成果の上がる組織やチームをいかに作り上げていくか、これは古代から現代企業に至るまで、一貫して大きなテーマであり続けています。
この点においておおきな評価を得ている「孫子」の指摘があります。
「卒、いまだ親附せざるに而もこれを罰すれば、即ち服せず、服せざれば即ち用い難きなり。
卒、いまだ親附せざるに而も罰行なわれざれば、即ち用うべからざるなり。故にこれに令するに、文を以ってし、これを斉うるに武を以ってす。
これを必取と謂う。
令、素より行なわれて、以ってその民を救うれば、即ち民服す。
(兵士が十分に懐いていないのに、罰則ばかり適用したのでは、兵士は心服しない。
心服しないものは使いにくい。
すっかりなついているからといって、過失があっても罰しないなら、これもまた使いこなせない。
したがって、兵士に対しては、温情をもって教育するとともに、軍律を持って統制を図らなければならない。
普段から軍律の徹底を図っていれば、兵士は喜んで命令に従う。)
つまり、
- 愛情や温情による心服
- 規律による統制
の2本立てによって部下をまとめなさい、ということです。
ここで重要なポイントは、「心服が先に来ている」という点です。
どんな部下に対しても、まずは温情や愛情をかけることによって、「あの人ならついていける」と思わせることが組織統制の優先事項になります。
そして、トップに立つ人間の条件として、
「『将』とは、知、信、仁、勇、厳なり」
→知謀、信義、仁慈、勇気、威厳などの将軍の器量
という記述がありました。
わかりやすく述べると以下のようになります。
- 知謀・・・先を見通し、謀略を駆使できること
- 信義・・・部下から信服されること
- 仁慈・・・部下を思いやること
- 勇気・・・実行力
- 威厳・・・部下から恐れられること
これを5つ備えるのは大変なことではありますが、これをバランスよく備えることさえできれば、「名将」になれるかもしれません。
まとめ:経営者の愛読書「孫子」をぜひ読んでみましょう
ということで、
今日は「最高の戦略教科書 孫子」の本の内容のまとめをしてきました。
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今日は「第一部」のうち、私が感心した考え方を紹介してきましたが、この本の「第二部」では「孫子は現代でも活用可能なのかーその内容の一般化と抽象化とツッコミ」が載っています。
筆者が、孫子の内容を現代風にわかりやすく解説しており、こちらも大変面白かったので、ぜひ本全体を読んでみることをおすすめします。
ということで、今日はこれで^^
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