こんにちは。
年間100冊以上の本を読むフリーのファイナンシャルアドバイザーNatsumiです。
今日は「読書レビュー」です。
みなさんは「観光」についての本を読んだことはありますか?
わたしは「観光」についての本は全く読んだことがなかったのですが(観光本ではなくて、観光を経済的に分析した本ですよ)、
今回読んだ本が、観光経済についての基礎知識を得るには
とてもわかりやすい本だったので
今日はその本を紹介したいと思います。
「新・観光立国論」という本です。
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2015年に発行された本なのでデータが少し古いですが、最新のデータと合わせながら、
- 日本のGDPを上げるにはどうしたらいいか
- 観光が日本に与える影響とは
- 「観光」大国とはどういうことか
- 「観光」が成り立つための要素は何か
などを本の内容をまとめていきたいと思います。
Contents
日本の置かれている状況をまず把握する
まず、観光に限らず世界から見た日本が置かれている状況を確認しておきます。
皆さんもご存知の通り
日本は人口減少社会
です。
生まれてくる人の数よりも死ぬ人の数の方が多く、年々人口が減っています。
みなさんは日本が今どれくらい成長をしているかご存知ですか?
GDP成長率がいくつか知っていますか?という質問でも良いでしょう。
なんと、
2019年度の実質成長率は0.5%
と予測されています。
マイナスよりはマシかもしれませんがお世辞にも成長しているとは言えないでしょう。
GDPと人口には強い相関が確認されているので、
人口が減っていく日本はGDPが非常に成長しづらい国となっています。
では、「成長しづらい」という未来が約束された日本は、
人口が増えないと言う現実を変えない限り、ただ座して新興国に追い抜かれるのを待つことしかできないのでしょうか?
そんなことはありません。
人口を増やせばいい
のです。
人口を増やす方法はいろいろあります。
- 少子化対策をする
- 移民を受け入れる
などが挙げられますが
子供を産むことに対する政策や補助の少ない日本で子供を産むことを選択しない人も増えていますし、
そもそも結婚することを選ばない人も増えています。
また、日本はほとんど移民を受け入れていません。
そこで筆者が挙げている施策は
短期移民を増やすこと
です。
短期移民とは「一定期間滞在するだけの外国人」です。
つまりは、
訪日外国人旅行者数を増やすこと
です。
「観光」に力を入れて、外国人の人に「消費」で国にお金を落としてもらうこと
が、
日本のGDPを上げる施策だと主張しています。
日本の「観光」について

さて、
日本が経済成長するために「観光」に力を入れるべきということがわかったところで、
現在の日本の観光についてまとめておきましょう。
この本が出版された2015年の訪日外国人旅行者数は
1,973万7千人
でした。
この時点でも「過去最高の外国人観光客が来た」というニュースが取り上げられていましたが、
世界を見渡せばこの2.3倍は当たり前です。
日本は「観光大国」とは程遠い、「観光後進国」なのです。
世界経済フォーラムが発表した2015年の「観光潜在力ランキング」を見てみると
(The Travel & Tourism Competitiveness Report 2015より)
日本は世界有数の観光大国となりうる潜在力を持ちながら、その強みを全くと言って発揮できていないことがわかります。
さて、この情報は2015年の情報なので、最新の情報を確認しておきましょう。
去年2018年の訪日外国人旅行者数は
3,119万人
でした。
(【図解】2018年の訪日外国人数は8.7%増3119万人に、自然災害による落ち込みは回復傾向(直近10年比較グラフ付き)より)
また最新(2017年)の「観光潜在力ランキング」を見てみると、
(The Travel & Tourism Competitiveness Report 2017より)
ランキングが4位まで上昇しました。
訪日外国人旅行者数は順調に上昇してはいるものの、
観光大国であるフランスは年間に8,000万人以上の人が訪れています。
まだまだ到底その数には追いつかないような旅行者数なのです。
また、筆者は「2030年に年間8,200万人の訪日外国人旅行者数」を目指すことを提言しています。
そうなるために、どうすれば良いのかを述べていきます。
観光立国の4条件

「観光立国」には4つの条件が必要不可欠だと言われています。
その4つが
「気候」「自然」「文化」「食事」
です。
そして、日本はその4つの条件を満たす稀有な国です。
「気候」については、暑い地域と寒い地域の差が大きいため
北海道ではスキー、沖縄でビーチリゾートを楽しむことができます。
「自然」については、屋久島の森林や富士山に代表される山岳を楽しむことができます。
「食事」については、「和食」が世界文化遺産になったことから注目されています。
最後に、「文化」については、
日本独自の「日本庭園や歌舞伎、和服」の文化もありますし、アニメや漫画などの現代文化もあり
幅広い文化が存在します。
このように「観光立国」となっていなくてはならない日本にまだ年間3,000万人ほどの人しか来ていない
ということが
日本が「観光」を活かせていないと言う事実そのものなのです。
さきほどお伝えした通り観光大国フランスは年間に8,000万人以上の人が訪れます。
条件は負けず劣らずの日本が、フランスの1/3ほどの観光客しか訪れていないのは
まだまだ日本の「観光産業」には伸びしろがあるということなのです。
日本は観光鎖国?
恵まれた「観光」に対する条件があるものの、それを活かせていないのは、
そもそも日本が「観光」というものを軽視してきたという背景があります。
また、「観光」に対する正しい理解がないという背景も存在します。
日本ではよく「おもてなし」=礼儀がいいこと・勤勉なことは素晴らしい、という表現がされますが
果たしてそれは外国人が求めていることでしょうか?
先ほども述べた通り、
観光に必要な条件なおかつ観光客が観光に求めている条件は
「気候」「自然」「文化」「食事」
です。
だれも、「おもてなし」は求めていないのです。
「おもてなし」を求めて観光客が来るのであれば、観光大国のフランスは「おもてなしが良い」で有名ですか?
フランスには失礼かもしれませんが、さすがに「おもてなし」で観光客を集めているとは思えません。
フランスの有する美術品や街並み、美味しいフランス料理、温暖な気候がフランスに人を呼び寄せているのです。
つまり、
日本は「観光」に対する理解や軽視が故にアピールポイントを間違えている
ということになります。
逆に海外のメディアで日本の魅力を紹介しているものを見るとどのような魅力が紹介されていると思いますか?
- 歴史的名所(姫路城など)
- 京都の寺社(清水寺など)
- 伝統体験(旅館やお茶など)
- 食事
- 自然(スキー・沖縄など)
が紹介されているそうです。
見事にこれまで話してきた
「気候」「自然」「文化」「食事」
が紹介されています。
このアピールのズレを正すことから、
日本の観光の情報発信は変えていかなければなりません。
日本が「観光立国」として成長するためには

以上を踏まえた上で、
日本が「観光立国」として成長するためにいくつかの方法が紹介されています。
1つ目は、
顧客が誰なのかを明確にし、細かいセグメンテーションで対応する
ということです。
みなさんはどこの国の人が日本に1番訪れているのかご存知ですか?
1位は中国の約27%で
2位は韓国の約24%です。
地理的にアジアからの旅行者が多いですね。
さて、大きなくくりで「アジア」からの旅行客とまとめても
それぞれにとっての日本に来る「目的」は異なります。
例えば、
韓国人の方は「日本食」を目当てに来る方が多いそうです。
中国人の方は「買い物」を目的に来る方が多いそうです。
よって、その多様な目的に対応できるようにする必要があります。
また、その多様な目的・ニーズを満たすような情報発信もする必要があります。
それぞれへの細かい対応が今後は求められていきます。
2つ目は
コンテンツの多様化
です。
アニメが好きな外国人もいれば、歌舞伎を見たい外国人もいます。
電化製品を買うのが目的の外国人もいれば、
せっかく日本にきたからには京都で着物を着てみたり、日本情緒あふれる祇園で遊んでみたいという外国人もいるでしょう。
このような「幅」のあるコンテンツ整備が必要となります。
従来の日本の観光立国をめぐる議論を聞いていると
「外国人を呼ぶためにはこのコンテンツだ」
というような、シンプルアンサーを求めている声が非常に多いのです。
しかし、外国人のニーズは多様化しています。
外国人を呼ぶためには「色々やる」くらいの考えにシフトする必要あるのです。
具体的には
- 高級ホテルを作る
- 交通機関のVIP対応/追加料金対応
- 複合リゾートを作る
- 文化財を整備する/ガイドを有料で提供する/多言語対応
- 街並みの整備(ビルと歴史的建物を一緒にしない)
などの案がまとめられています。
まとめ:オリンピックの結果が今後の「日本の観光」を左右する
ということで
今日は、「新・観光立国論」では日本のGDPを成長させるためには訪日外国人旅行者数を伸ばすべきという内容で、
日本がどうすれば訪日外国人旅行者数を伸ばすことができるのか、ということをまとめてきました。
交通インフラを安くすることや多言語表示を増やすこと、など
まだまだ日本がやるべきことはたくさんありますが
一年後に迫ったオリンピックこそが
海外から、「日本の観光」が評価される審判の日だと筆者は述べています。
ここで評価されれば今後も日本に来る観光客は増えるし、
そうでなければ日本は依然として成長しない国となるのでしょう。
そう言う意味でもオリンピックは注目すべきイベントなのかもしれません。
それでは、今日はこれで^^
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