こんにちは。
元野村證券女性営業マンのフリーファイナンシャルアドバイザーNatsumiです。
この記事では「企業分析」をしていきます。
原油埋蔵量、生産量、輸出量が世界最大を誇るサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコ。
2019年12月にサウジアラビアの証券取引所に上場し、Appleの時価総額を超えているということで話題になりました。
ということで、今日は
サウジアラビア・サウジアラムコ
の企業分析をし、
- サウジアラムコの事業内容
- サウジアラムコの強み
- サウジアラムコの今後の戦略
を明らかにしていきたいと思います。
サウジアラムコってどんな会社?
サウジアラビア王国の国有石油会社
です。
先ほど述べた通り、保有原油埋蔵量、原油生産量、原油輸出量は世界最大です。
サウジアラムコはサウジアラビアのダーランに本社を置き、同国における石油換算で3,329億バレル相当の確認埋蔵量を管理しています。
世界市場への供給のため、主要な輸出ターミナルをアラビア湾と紅海の港に配置する一方、国内需要は戦略的に配備された製油所と広範な天然ガスパイプラインシステムを有する全国ネットワークを通じて提供しています。
その規模の大きさで、フォーチューンのグローバル500社ランキング総収入トップ10入りをしています。
順位 | 企業名 | 国 | 総売上 |
1 | ウォルマート | アメリカ | 56兆641億円 |
2 | 中国石油化工集団(シノペック) | 中国 | 43兆5,499億円 |
3 | 国家電網公司(ステートグリッド) | 中国 | 41兆779億円 |
4 | 中国石油天然気集団公司 | 中国 | 40兆5,669億円 |
5 | ロイヤルダッチシェル | オランダ | 37兆6,753億円 |
6 | サウジアラムコ | サウジアラビア | 35兆2,868億円 |
7 | フォルクスワーゲン | ドイツ | 30兆2,553億円 |
8 | BP | イギリス | 30兆2,399億円 |
9 | Amazon.com | アメリカ | 30兆158億円 |
10 | トヨタ自動車 | 日本 | 29兆4,558億円 |
石油・エネルギー市場について
世界の石油需要はここ数年下がり続けています。
国際的な原油価格は、リーマン・ショックの影響により2009年前後に一時的な急落を見せたものの、2004年以降は一貫して上昇基調にありました。
しかし、2014年後半以降、原油価格は大幅な下落に転じます。
理由は、
- 中国などの新興国の成長率減速などによる需要の伸び悩み
- 米国での大幅なシェールオイル増産
- 石油輸出国機構(OPEC)をはじめとする主要産油国の高水準生産
など、「全世界的な供給過剰感」が背景と言われています。
原油価格の低迷は、世界中の石油・天然ガス開発企業に大きな打撃を与えました。
「スーパーメジャー」と呼ばれる世界を代表する5社(ExxonMobil、Shell、BP、Chevron、Total)の石油・天然ガス開発企業においても、2016年の純利益は2014年比で約76%、投資額は約37%減少しています。
2000年前後はアジア通貨危機やOPECの合意などにより原油価格が急落するなど、市場環境や事業環境においても大きな転換点がありました。
米国の代表的な株価指数であるS&P500が1985年から2000年にかけて7倍強に拡大するなど、株式市場が著しく発達し、成熟産業とみなされていた石油産業は、株主からより強い圧力に晒され、利益率向上のための経営合理化を迫られました。
こうした背景から、オイルメジャーは2000年前後に大規模な再編期を迎えることとなります。
そして、ヨーロッパやオーストラリアにおけるガソリン車の販売禁止が今後予定されていたり、石油製品の需要が減少に転じたりしていることから、
これらの地域においては、従来の精製設備では効率的に供給することができなくなるという需給のミスマッチが顕在化しています。

そのため、オイルメジャーでは、需要減少が見込まれる先進国地域での下流事業、特に石油精製事業を縮小し、今後の経済成長に伴う需要増加が見込まれるアジア地域等へ資本の移転を進め、石油製品のトレーディングを通じて全体の需給バランスを最適化することにより、収益の最大化を追求する対応を進めています。
こうした先進国地域における企業とは別に、これまで上流分野での国外投資に積極的であった中国の国営石油企業においても、下流分野での国外進出、とりわけ、今後成長が見込まれるミャンマー、カンボジア、シンガポールなどアジア地域における製油所の取得等の投資が進められています。
また、シノペックがサウジアラビア等においてサウジアラムコとの合弁による製油所を新設し、ペトロチャイナがイギリスやフランスなどにおいて製油所を取得するなど、アジア地域以外への進出の動きも見られます。
こうした動きを通じて、世界規模で最適な石油供給ネットワークを構築しようとする取組が進められています。
サウジアラムコの事業と強み
サウジアラムコのサウジアラビアにおける国内事業としては、
探査、原油・天然ガスの生産と加工、精製、ガス分別、石油化学製品の製造、石油製品とガスの国内顧客への販売
などがあります。
ガソリン、ディーゼルなどの製品を国内の顧客や消費者に供給するために、国内で3つの製油所を所有・運営しており、現在さらに4ヶ所目を建設中です。
また、国内において、国際パートナーと共同で5つの製油所の運営に参加しており、そのうちの4ヶ所は総合的化学品製造能力を備えています。
国外においては、世界の3大エネルギー市場であるアジア、北米、欧州に進出しています。
これらの戦略的地域におけるサテライトオフィスを含むサウジアラムコのグローバルリサーチネットワークは、技術ソリューションを通じて世界のエネルギー課題の解決に取り組んでいます。
サウジアラムコの今後の戦略

サウジアラムコのアミン・ナセル最高経営責任者は、天然ガス開発や化学プロジェクトに今後10年で総額5,000億ドル(約56兆4,900億円)を投じることを明らかにしました。
ガス開発に1,600億ドル、化学事業に1,000億ドルを充てます。
ナセルCEOはサウジのダーランでのインタビューで、中東最大の化学事業体であるサウジ基礎産業公社(SABIC)の過半数株式を取得する計画に加えて、新たな投資を行うと語りました。
SABICの株式取得費用は約700億ドルに上る可能性があります。
サウジは原油輸出に長年依存してきた経済の多角化を図り、新たな産業を育成する戦略をムハンマド・ビン・サルマン皇太子主導で推進していますが、
サウジの政府系ファンド(SWF)パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が保有するSABICの株式70%をアラムコが取得する計画はその重要な柱となります。
2016年にサウジアラビアは、「サウジアラビア・ビジョン 2030」の発表もしており、経済、政治、社会の発展を目指すこの野心的な計画は「活気ある社会」「盛況な経済」「野心的な国家」の3つを中心として構築されています。
その中にはサウジアラムコに委託された44億米ドル規模のアブカイク新エネルギー産業都市の構築の計画などもあり国策にサウジアラムコが担う役割は大きいと思われます。
また、この後に述べるサウジアラムコのIPOはこのビジョンのプロジェクトの1つです。
「Public Investment Fund=公共投資基金」を拡充することで非石油部門への投資資金を確保する狙いです。
サウジアラムコの株価について
サウジアラムコは2019年12月にリヤドの証券取引所に上場しました。
サウジアラムコの上場はかなり注目されていたのですが、その理由は、このIPOが調達金額1,000億ドルと言われており、売出しが同社の発行済み株式数の5%なので、それから逆算される時価総額は、2兆ドルにもなるため、「当時、世界で時価総額No.1のアップル(時価総額9,000億ドル)の2倍を超える、世界最大の上場企業がいきなり登場する」ということで注目されていました。
まとめ
ということで、今日は「サウジアラムコの企業分析」をしてきました。
それでは今日はこれで^^
