こんにちは。
元野村證券女性営業マンのフリーファイナンシャルアドバイザーNatsumiです。
今日は「企業分析」をしていきたいと思います。
アメリカのチャールズシュワブって会社が、株式売買手数料を無料化を率先して実施したっていうニュースを見たけど
どんな会社なんだろう?
強みやビジネスモデルを詳しく教えて!
アメリカのリテール証券業務に携わっている会社は、アメリプライズ・ファイナンシャル(Ameriprise Financial)やチャールズシュワブ (Charles Schwab)といったリテールの証券会社やバンク・オブ・アメリカ(Bank of America)、メリルリンチ(Merrill Lynch)といった大手金融機関のリテール部門などが数多く存在し、競争を繰り広げています。
そんなアメリカの金融市場の中で近年注目されている証券会社がチャールズシュワブです。
今日は、
アメリカ・チャールズシュワブ
の企業分析をし、
- チャールズシュワブの事業内容
- チャールズシュワブの強み
- チャールズシュワブの今後の戦略
を明らかにしていきたいと思います。
チャールズシュワブの株式はニューヨーク市場に上場しているので売買ができます。
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Contents
チャールズシュワブってどんな会社?
チャールズシュワブは、アメリカ最大の
証券会社
です。

1971年にCharles R. Schwab氏によって設立されました。
日本のみなさんにとっては馴染みのない名前の会社かもしれませんが、2019年10月1日にウォール街を驚かせた「ある」ニュースを発表し日本でも株式ニュースを見ていた人は聞いたことがある会社かも知れません。
そのニュースの内容とは、2019年10月7日よりアメリカのチャールズシュワブ社は
パソコンのウェブサイトとモバイル端末を通じた、米国株と上場投資信託(ETF)、オプションの手数料を撤廃する
というニュースです。
業界リーダーのチャールズ・シュワブが米国株と上場投資信託(ETF)、オプションの手数料を撤廃する計画を発表し、価格競争がエスカレートするとの見方が広がった。
Photographer: Christopher Lee/Bloomberg 米ネット証券各社の株価急落、シュワブ手数料撤廃で競争激化へより
・・・
投資家の低コスト志向が強まる中、証券業界では手数料の引き下げ競争が激しさを増している。インタラクティブ・ブローカーズも先週、手数料ゼロの取引を提供すると発表。昨年半ば以降、フィデリティ・インベストメンツやバンガード・グループ、JPモルガン・チェースなどが幅広い金融商品について手数料を撤廃している。
・・・
チャールズ・シュワブの1日の発表資料によれば、パソコンのウェブサイトとモバイル端末を通じた取引の手数料は、従来の1件当たり4.95ドルから7日をもってゼロとなる。
証券会社にとって日々行われる株式の売買手数料は収益源の柱となっていますし、そのような売買手数料を積み重ねることで収益を上げていくのが現状の証券会社のビジネスモデルです。
そのため今まで投資信託の一部が売買手数料無料などの取り組みをしている会社はあったものの、「株式取引売買の手数料を無料」にした会社はありませんでした。
今回、チャールズシュワブがこの「株式売買手数料の撤廃」をしたということで、日本並びに世界中の株式ニュースではかなり注目された出来事となりました。
また、チャールズシュワブはこのような取り組みをする以前にも「あることを実施した企業」として、ここ数年前から証券会社の人間や株式取引をする人には名の知れた企業として有名です。
それが、
「悪い」手数料をなくした
という取り組みです。
悪い手数料とは、以下のような手数料のことです。
- 株、投信、債券投資などに関連した取引手数料を簡素化し、引き下げを実施
- ブローカー口座のATM手数料、支店で小切手を受け取る際の手数料、請求書支払いに関連した手数料といった「妨害手数料(不愉快な手数料)」を撤廃
このような「悪い手数料」の撤廃をすることを2006年、顧客向けのレターにて発表ならびに実施しました。
先ほどもお伝えした通り、金融商品の売買手数料は証券会社にとっての収益源です。
そのため、この取り組みは私たち利用者にとってはもちろん喜ばしいものの証券会社にとっては自らの首を締めているのと同じことになります。
よって、チャールズシュワブの2006年の収益は120億円減少すると予想されていました。
ですが、実際にはネット入金額が10兆円増え、結果として資産管理手数料収入は325億円も増加。
年間収益は前年よりも820億円も増加したそうです。
このように、「自らの収益の柱を削ってまで、顧客がチャールズシュワブを利用していることの価値を高め、なおかつ、収益が下がることなく、むしろ増益した」という功績がチャールズシュワブの名前を世に知らしめることとなりました。
アメリカ証券業界の市場について
2019年の米国の大手証券会社の収益ランキングは以下の通りです。
会社名 | 収益(10億ドル) | |
1 | ブラックロック(BlackRock) | 14.54 |
2 | チャールズシュワブ (Charles Schwab) | 11.79 |
3 | ジョーンズ ファイナンシャル/エドワード ジョーンズ/(Jones Financial/Edward Jones) | 9.53 |
4 | KKR | 9.12 |
5 | レイモンドジェイムズファイナンシャル(Raymond James Financial) | 8.02 |
6 | インターコンチネンタルエクスチェンジ(Intercontinental Exchange) | 6.35 |
7 | TDアメリトレードホールディング(TD Ameritrade Holding) | 6.02 |
8 | フランクリンリソース(Franklin Resources) | 5.77 |
9 | LPLファイナンシャルホールディングス(LPL Financial Holdings) | 5.62 |
10 | ティー・ロウ・プライス (T.Rowe Price) | 5.37 |
アメリカの証券業界には世界最大のニューヨーク証券取引所があるウォールストリートに近いという利点があります。
ニューヨーク市だけでも証券業界の従業員に支払われるボーナスの価値は数10億米ドルにのぼります。
この都市で事業を展開することにより、アナリストはこの分野の他の専門家とネットワークを構築し、効果的なビジネスネットワークを作成することができます。
業界1位・2位であるブラックロックとチャールズシュワブはそれぞれ数兆ドルの資産を管理しています。
チャールズシュワブのビジネスモデル・強み
チャールズシュワブの収益源は、「純金利収入と預かり資産連動フィー」です。
1971年にディスカウント・ブローカーとして創業したシュワブは、1990年代後半にはオンライン・ブローカーとして躍進を遂げ、一時は中堅投資銀行や富裕層向け信託銀行を傘下に入れたものの、2000年以降のITバブル崩壊によって戦略を修正せざるを得なくなった。
法人・富裕層ビジネスから撤退する一方、多額のIT投資で培った先進的なプランニングツール・レポーティングシステムによるガイダンスを生かしながら、マスアフルエント層に投信スーパーマーケット(乗り換え自由型プログラム)、投信ラップ口座(投資一任契約)を積極的に提供する戦略に転換し、預かり資産連動フィーを中心にした収益構造を構築した。
さらに、直近で1,140万件を超えた証券・投信口座保有者に対し、傘下の銀行を通じて預金・カードも提供、一方で証券担保ローンや住宅ローン貸出を積極化していることから、現在では純金利収入も有力な収益源となっている。
投資サービスの『プラットフォーマー』を志向する米国金融機関:野村ホールディングスより
ということで、
- 預かり資産連動フィーを中心にした収益
- 証券担保ローンや住宅ローン貸出による純金利収入
により収益を上げていくというビジネスモデルになっています。
このようなビジネスモデルを既に確立しているために、収益源シェア10%以下のトレーディング収益に属する株式売買手数料を撤廃するという決断ができたのでしょう。
チャールズシュワブの強みはもちろん先ほどのお伝えした
悪い手数料を廃止し、顧客がチャールズシュワブを利用していることの価値を高めた
ことです。
そして、悪い手数料を取らない代わりに預かり資産連動フィーを中心にした収益を増やして会社を大きくしていきました。
また、チャールズシュワブが大きくなったのにはもう1つの要因があります。
それが
RIAカストディアン
という制度です。
RIAとは、独立系登録投資顧問業者のことをいいます。
昨今日本でも野村證券や大和証券に所属する社員として金融商品を勧めるのではなく、独立して金融商品を勧められるIFAになる人が増えているというのはこのブログでもお伝えしている通りです。

この流れはアメリカでは日本よりも早く始まっており、4大証券会社(フルサービス大手証券会社)から独立してRIA法人へ移籍するほか、4大証券会社から独立して投信・保険販売をするブローカー・ディーラー(IBD)へ移籍するケースも見られています。
そして、優れたツールやレポーティングシステムを有し、富裕層顧客に直接マーケティングをしないチャールズシュワブをカストディに指名するRIAが急増しました。
2018年9月末シュワブの顧客資産は約3.6兆ドルと、モルガン・スタンレーの約2.5兆ドル、メリル・リンチの約2.4兆ドルを圧倒していますが、アドバイザー・サービス部門の顧客資産が1.7兆ドル近くを占めており、アドバイザーが顧客資産管理のプラットフォームを大手証券からシュワブに乗り換えたとも見れる状況が見て取れます。
以上のような取り組みが評価され、チャールズシュワブ は、「2018年J.D.パワー米国投資フルサービス顧客満足度調査」(2018年3月29日発表)で、3年連続1位となっています。
チャールズシュワブの今後の戦略
2019年11月26日、チャールズシュワブについての新たなニュースが発表されています。
米金融サービス会社のチャールズ・シュワブは同業のTDアメリトレード・ホールディングを買収することで合意した。
数十億ドル規模のTDアメリトレードの買収によってリテール向け証券業界は様変わりすることになる。
両社の合併に伴い資産額5兆ドルという巨大企業が誕生することになり、・・・
チャールズ・シュワブ、TDアメリトレード買収合意-2.8兆円規模:ブルームバーグより
ということで、チャールズシュワブが同業のTDアメリトレード・ホールディングを買収するというニュースが出ました。
去年出たこのニュースですが、2020年6月に米司法省が買収を承認したとしており、買収が実現により顧客の運用資産が5兆ドルに上る巨大証券会社が誕生し、より小規模な競合企業には連携模索の圧力がかかることになる見込みです。
この買収によって、チャールズ・シュワブは約1,200万の顧客アカウント、1.3兆ドルの顧客資産、約50億ドルの年間収益を手にすることになるため、チャールズシュワブが証券業界収益1位であるブラックロックを抜く日はそこまで遠くないかも知れません。
チャールズシュワブの株価
チャールズシュワブはニューヨーク証券取引所に上場しています。

まとめ:アメリカで起こることは、のちに日本で起こる
ということで、今日は「チャールズシュワブの企業分析」をしてきました。
日本でもやっと対面証券1強の時代が終わり、IFAやネット証券を利用する人が増えましたが、このような流れはアメリカで10年前くらいから起こっていたことであり、今アメリカで起こっていることは10年後くらいに日本に来るかも知れませんね。
そんな視点を持ちながら、企業を選んでみるのも面白いかも知れません。
それでは今日はこれで^^